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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(オ)267号 判決 1951年8月31日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

理由

上告人等代理人弁護士岡本共次郎の上告理由第一点について。

所論は、原審における証拠の取捨判断を非難し、原審の事実認定を争うに帰するから、上告理由として採用の限りでない。

同第二点について。

家督相続人選定のために招集された親族会において、旧民法九八五条三項の規定により、他人を家督相続人に選定する場合における裁判所の許可は、決議をなした後においてこれを得ることを妨げないことは旧大審院の判例(大正一四年(ク)第六〇二号同一五年一月八日第二民事部決定参照)とするところであつて、当裁判所においても今これを変更すべきものとは認めない。そして亡成田与三郎の家督相続人選定のため昭和一九年九月一四日招集された親族会において親族会員である上告人等及び被上告人により、裁判所の許可を得ることを条件として右与三郎の内縁の妻であつた川浪さんを家督相続人に選定する旨の決議がなされたことは、原審が適法に認定したところであるから、右の決議はその後裁判所の許可があれば、許可の時から有効となるものと解すべきであつて、右の決議につき事前に裁判所の許可がないこと乃至は現在未だ裁判所の許可がなされていないというだけでは右の決議が当然無効のものとは云い得ない。このような場合、右の決議が不許可となつたとでもいうのでない限り、右の決議をなした親族会員は、右の決議に拘束されて、その後同一事項につき右決議と内容において抵触する決議をすることは許されず、もしそのような決議があつたとしてもその効力は認めることができないものであつて、上告人等は前記決議が不許可になつたと主張するのではないから、上告人成田熊次郎の招集通知により同年一一月二六日同人方に招集された上告人等と被上告人とを親族会員とする親族会において亡成田与三郎の家督相続人として成田久を選定する旨の決議がなされたとしても、右決議は明らかに前記同年九月一四日に招集された同一親族会においてなされた決議の内容と抵触するものであつて無効のものといわなければならない。これに反する論旨は採るを得ない。従つて又右成田久が被相続人与三郎の親族であつても、右の決議により直ちに亡与三郎の家督相続人に確定するいわれがないから、これを前提とする論旨も亦理由がない。

よつて民訴四〇一条、八九条及び九五条により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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